それは今年の春だった。近所にアンリ・シャルパンティエの店があることを知り、大好きなフィナンシェを買うためにウキウキと出かけていった。フィナンシェと他の焼き菓子をいくつか選んで代金を支払い、さあ帰ろうと思ったが商品を渡してくれない。何をしているんだろうと店の奥を見ると、さっき私が選んだ焼き菓子を取り出して別のものに詰め替えている。不良品でもあったのかな?その時はそう思って店を出た。
しかし従業員の妙な行動がどうも気になったので、店の外ですぐに中身を確認してみた。すると・・・賞味期限が短くなってる! 私は間違いなく賞味期限がいちばん長いものを取ったはずだ。それに気付いた従業員が、わざわざ賞味期限の短いものと入れ替えていたのだ。まさかアンリ・シャルパンティエのような有名店が、客に対してそんな失礼なことをするわけがない。そう思いたかったが、店に戻って見てみると、私が最初に選んだ賞味期限が長いほうの商品が元の場所に置かれていた。
「・・・あなた、さっき私が選んだコレを賞味期限が短い方と入れ替えましたよね。この店ではそういうやり方をするんですか」
「あっ・・・えっ・・・あの、そちらの方がよろしかったですか?」
(-_-#) ブチッ・・・このとぼけた返答にキレた。凍りつく店内、固まる人々、必死に謝る従業員、アンリ・シャルパンティエでは通常ありえない異様な光景だったに違いない。そんなわけでウキウキ気分はすっかり台無し。せっかくのフィナンシェも美味しく食べることができなかった。あ〜、思い出したらまた嫌な気分になってきたぞ。クソッあいつめ。もっといろいろ言ってやればよかった。それ以来、アンリ・シャルパンティエには一度も行っていない。